▲エゴマの葉の朝鮮漬けとコチジャン。

その1、エゴマの葉の朝鮮漬け

この夏は大分県在住の旧友、大野史郎・富美子夫妻より手作りの「エゴマの葉の朝鮮漬け」をたくさん送ってもらった。おかげで食の衰えという事態には無関係に過ごすことができ、さしもの猛暑も身にこたえずに済んだのである。それどころか、この葉で熱いごはんをくるりと巻いて口にいれると、燃えるような辛さと、じんじんするうまさがいちどきに襲ってきて結果として大飯を喰らってしまう。そもそもエゴマの葉というのが貴重なもので、このへんでは栽培しているのをみたことがない。近所の有機農業を手掛ける知人に訪ねると、植物名それじたいを知らなかった。ずいぶん以前のことだが、上野のキムチ専門店界隈でエゴマの葉が10枚くらいずつゴムでまとめて売られていたのをみたことがあるが、たしかそのひと束で200円くらいしたんではなかったろうか。
大野史郎・富美子夫妻は大分県宇佐市で陶房をひらいている。かれらの作るものは端正で品があり、日常使っていてじつにたのしいものである。我が家の食器の大半はかれらの手になるもので、その飽きのこない味わいにはいつも感心させられる。写真の蓋ものがそのひとつである。同時に、もともと大胆な作品にらしさが現れるタイプだったから、大きい鉢や皿も作っていて、そのできあがりはすばらしく迫力のあるものだ。陶芸のかたわら、畑を借りていろいろな農作物を自作している。エゴマの葉も今年はかれらの畑でさわさわと豊かに育ったらしい。(連絡先・拾なヽ陶房 〒872-0103 宇佐市北宇佐2108-1)
本年7月27日「朝日新聞」夕刊マリオン上の魚柄仁之助のコラム「食べちゃる!!」にやはり「エゴマの葉の朝鮮漬け」がとりあげられていて、かれはシソの葉でもどきを作ることを読者にすすめていた。このコラムは愛読していて、毎回のレシピをみてもセンスのあるひとだとわかる。そのかれにしてもエゴマの葉はなかなか手にはいらなかったとみえる。実はわたしもシソの葉や桑の葉、三つ葉などでもどきを作ってみたのである。まあ、世の中には似たようなことを考える人間がいるものだ。いろいろくふうはしてみたが、やはり本物の味にはどうしてもかなわず、これはこれとして、別のものとして舌にのせることにした。そう考えてみると三つ葉の老えた葉でも、ややトロ味のある桑の葉でもなかなかいけるように感じるからふしぎである。ちなみに、大野史郎のアドバイスとして、魚柄レシピの「醤油・みりん・ニンニクのすりおろし・韓国産粉唐辛子」に玉ネギのすりおろしたものと、胡麻油をプラスするとよい、とのことであった。
こうなると、なんとかエゴマの種を手に入れて、来年は庭で育ててみよう、とくりかえし考えるようになる。近所の農協や種苗店をのぞいてもそれらしきものはおいていない。とこうするうちに秋風が立つ。ある日、隣町の棡原(ゆずりはら)にある「ふるさと長寿館」でなにげなく土産物の棚をながめていたら、なんとエゴマが売ってあるではないか。それも地場産品ではなくて業者物である。火力を加えて活性を止めてあるんでは、と思ってよくみると、「煎って擦りつぶし和え物・煮物・味噌汁に」とある。つまり生きているわけだ。300gで500円なにがし。よし、と買ってしまった。はたしてこれでうまくいくんだろうか?発芽実験をしてみなくてはなるまい。  (2000.10.15)

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