第9回「ウルイ(オオバギボウシ)の味噌かけ」



ナイフで切り取った芽立ち。皿は佐賀県有田の英セラミックス製強化磁器(TEL09554-6-5211)で、絵付けはわたしである。

オオバギボウシの芽吹き。玄関のそばにこの程度のかたまりが5つほどある。

玄関脇に植えたオオバギボウシが今年の春も力強く芽立ちのときを迎えた。移植して5年になるが全体に衰えを知らず、むしろしだいに勢力範囲を拡大している。
もともとかみさんが以前の借家のころから育てていたもので、じつは斑入りの園芸品種である。ギボウシは日本原産で、ヨーロッパの園芸家から熱狂的に歓迎され、かの地では多様な品種が生み出されて定着しているらしい。
さて、今回はこの芽吹きを間引いて1品仕立てようという話である。もちろんちょっと山に入れば原種となったギボウシがそこらにたくさん生えているわけだが、それはひとまずおいといて、このうまそうな庭の恵みを攻略するとしよう。
塩ひとつまみ加えて、ぐらぐらに煮立てた湯のなかにくぐらせる。あまり火を通し過ぎないほうがいいだろう。特有の苦味がすっかり消えたのではつまらない。ユリ科特有のぬらめきと甘味、そこへ山菜らしいほのかな苦味が加わることで極上の味となるのだ。アサリの剥き身を使ってヌタにすることも考えたが、ここはシンプルにウルイだけを使って形を損ねないことにした。
問題はタレだ。子供たちにはマヨネーズを薦めたけれど、これは受け入れやすかったようだ。おいしいと口を揃える。で、大人はどうするか。やはりここは味噌ベースだろう。ちょうどパインジュースがあったので、これで味噌を溶き、少々酢を加え、韓国唐辛子粉でぴりっとさせた。
さわやかな春の風が吹き渡るような、舌を洗う感じの絶妙の味だ。南国の酒、泡盛にもぴったり合う。ちなみにこの日は石垣島は高嶺酒造所の『於茂登』があって、うれしい夕べだった。

気をつけなければいけないことは、農薬や化学肥料による土の汚染である。幸い我が家はその類いのものはいっさい使っていない。これはあらゆる山菜やキノコなどの採集にあたって注意しなければいけないことだが、除草剤などはかなり広範囲に使用されているので、うっかり油断できない。
ところで日本にはギボウシの仲間はおよそ50種もあるという。なかでもオオバギボウシは広分布種なので多少の採集では絶滅することはないらしい。(2007.3.12)

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