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わが歌は鉄のうた
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(7)

音楽をとりまくひとたちと
NPO法人ARCSHIP主催 YokohamaHOOOD!!#4のセミファイナルに出場して、もうだいぶ日が過ぎた。いまの時点でふりかえってみると、けっこう無謀な挑戦だったようにも思える。なにしろ他の参加者は、ほとんどがセミプロ的な活動をやっていて、日常的にコンサート活動を積み上げているようなメンバーばかりだったからだ。ファイナル進出がならなかったのは当然として、いい経験だったことは確かである。音楽表現の意味を再考させられたことはおおきい。ファイナル進出者の態度は立派だったし。 といって他の参加者に魅力がなかったわけではけしてない。わけても、ある人間味豊かなシンガーと知り合えたことをよろこんでいる。かれ、田中太郎氏とはかれの自主製作CDと、わたしの土鈴とを交換した。氏の歌はナイ−ヴな歌詞とはうらはらにきっちりシャウトしていて、そのギャップがおもしろい。いつか藤野でかれの歌をみんなに聴いてもらいたいと思っている。再会の日がたのしみだ。
12月7日、隣町の上野原町立病院でミニコンサートが催された。
もともと前院長だった江口英雄さんが企画して始められたものだが、今回は4回目で、今年の企画の内容を探していたところに、横山茂コンサートの話が持ち込まれた。その話を持ち込んだのはシーゲル堂ファンで横山おっかけの宝方喜代美さん。持ち前の行動力で上野原の文化関係者にも働きかけ、企画を実現させたのだった。
当日は受け付けロビーに患者さんや病院の職員さんたち、町内の音楽ファン、それと藤野のひとたちも姿をみせて、盛況だった。正味1時間という限られた枠のなかで、聴いているひとたちにあたたかいものがまっすぐに届いたような引き締まったコンサートになった。やっぱり横山茂の歌は凄い力がある。それをかみしめるように認識させるものがあった。もっとも、歌の力はそれを引き出すひとが必要で、ピアノのKYOUこと室坂京子さんのパフォーマンスの素晴らしさも特筆しなければならない。
コンサートそのものが尻上がりによくなっていく。つまりパフォーマーと観客との一体感が高まっていくわけだが、KYOUのピアノや語りやしぐさ、表情は場を高めるグルーブを造り出す。そして1時間はあっというまに過ぎた。だれもが立ち去り難い余韻を漂わせて。
ところで、わたしは口開けに2曲歌った。
三橋美智也のナンバーから『赤い夕陽の故郷』と『星屑の町』。
よろこんで声をかけてくださったお年寄りもいて、率直にうれしかった。YokohamaHOOOD!!#4での経験は伊達ではない。オリジナルへのこだわりをさっぱりと捨てられたのも、あの経験あればこそである。
経験といえば、横山さんやKYOUさんといっしょのステージに立てるなんて、それだけで素晴らしい経験であり、光栄だった。
上2点の写真は三宅岳氏の撮影・提供。

このコンサートにわたしが使用した機材を紹介しよう。
両方とも名倉のシゲちゃんの持ち物で、今回もまた毎度のごとくお世話になった。
フェンダーのVIBRO CHAMPは真空管アンプである。堂々のビンテージ、MADE IN USAだ。シゲちゃんは低音のビビリをわざわざ修理して貸してくれた。さすがにバランスのいい音になっている。手持ちのエレキ、ヴァーンズで鳴らすと、ほこほこした音がまろび出だす。
しかし、今回のコンサートではピエゾピックアップ(モーリスPT-2)内臓のアコースティックギター、ギルドD-55を使うので、VIBRO CHAMPにそのまま突っ込んだのではゲインは落ちるし、音の角がとれない。きんきんの音になってしまう。それで、手ごろな価格のプリアンプが欲しくて、ネットオークションのサイトをのぞいていたのだが、これがなかなかみつからない。思いあまってシゲちゃんに相談すると、
「おれ、作ったのがあるよ」という返事である。それがこの写真のプリアンプだ。ギターアンプ側からのジャックを差し込めば自動的にONになる設計である。めんどうな操作はいっさいいらない。
アンプのSPEEDとINTENSITYつまみを1にする。TREBLEはレベル6に、BASSはレベル9に設定。会場である町立病院のロビーには、厚手の服を着たひとたちが100人近くいたのに、ちいさな真空管アンプはボリュームレベル7くらいで充分に響き渡った。コンサートがはねてから、「軽快なギターですね」とほめてくれたひとがいたが、これはひとつにはKYOUさんのパーカッションの援護の力であり、残るはこれらの機材の力がおおきい。
わたしのように、めんどうくさがりやは簡単な操作がなによりうれしいものだ。アンプもプリアンプも、その意味でいえばじつに簡にして要。歌の合間のスライドソロが耳障りにならなくて、きれいに響いてくれたらしいのもうれしいことだった。
今回は使用しなかったが、このPignoseのHOG20はネットオークションで5000円で落としたもの。充電式のアンプである。設計はアメリカだが、生産は中国で行っている。ストリートで演奏するひとたちが主に使う。自分もそのつもりで買った。ところがバッテリーが死んでいたのでシゲちゃんに頼んで新品に交換してもらった。その際、シゲちゃんは回路の一部に改良を加えてくれている。通常、このアンプはバッテリーへの充電も、コンセントから電源をとっての演奏も、アダプターを通していっしょに行う設計だ。ところがこれだと充電に時間がかかるし、バッテリーのへたりも早いらしい。そこで別にスイッチを作って、電気の通り道を分けてくれたのだ。

こんなふうに、わたしは音楽を取り巻くひとたちのあたたかさに包まれて日常を過ごしている。
この環境に感謝しつつ、自分の「音楽らしきもの」も少しずつ改良していければいいな、と思っている。 (2004.12.10)

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