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わが歌は鉄のうた
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9月23日、24日、在のアーティストたちが共同で遊ぶ「きのこプランニング」という一風変わったタイトルの催しがあった。3回目で、全体にパワーが落ちているのが問題だとされていた。9月23日は雨にも降られる。出店の売り上げも細々としたものである。客は同時開催のミュージカルなんかにひかれて子どもが中心だ。午後になって我々兄弟にお呼びがかかる。ギターデュオによる歌の時間である。いったい何年ぶりの本格的なステージだっただろう。そのくせ練習なしの一発勝負である。我々に与えられた持ち時間は30分だった。聴衆は子ども主体に150人くらいか。最初にニール・ヤングの『ハート・オブ・ゴールド』をやり、なつかしいアメリカンフォークのハーモニーと歌で照れぎみに持っていく。『ハート・オブ・ゴールド』をやったのには理由があって、同名のゆかいなお土産品をデザイナーの鈴木純さんが考えだして横山薬品で売るようになったということがある。その宣伝もやった。それからはオリジナルをやる心の余裕がなくて、わたしはJ・フォガティのナンバーを2曲歌い、弟がオールドブルースを2曲やってしめくくった。ふたりともかなりぼろぼろだったけど、「少しはやるな」というひともいるにはいたようだ。聴衆の年令なんかなんにも考慮しない「やる奴本位」の30分。ところでお楽しみはこれでおしまいではなかった。弟夫妻は予定を早め車をまわして千葉へ帰った。帰り着くまでに4時間もかかったという。都心をはさんでの車での移動は時間がかかりすぎる。弟が「きのこプランニング」の場から消えたら、腕達者な音楽好きの連中が口々に残念がった。みんなジャムセッションを期待していたのである。「ジャムセッションは音楽的に他人を恋するのに似ている」と故ジミ・ヘンドリックス。わたしや弟が参加できるセッションは、コードがひとつか、せいぜいふたつ、多くても3つくらいの単純なくり返しを使う場合に限られる。この夜は在のアーティストたちとのアットホームなセッションだった。なんといってもこの催しで最高だったのはプロの若いミュージシャンたちとのセッションが実現したこと。それは次の日の夕方から野外で始まった。アトム・サキソフォーン・カルテットというクラッシックからジャズまで幅広いレパートリーを持つ四人組が演奏にきてくれてずいぶん楽しんだのだが、在のアーティストたちのにわかバンドに彼等も参加してくれたのだ。わたしはボーカルとスライドギターで加わった。日が落ちるくらいまで演奏が続く。みんなの即興がひとつになって聴衆もけっこうのりのりだった。ほんらいの仕事をほっぽらかして自分はなにをやってるんだ、という反省はずいぶん後からやってきた。なにしろ楽しくて反省どころではなかったのだ。聴衆の前で思いっきり歌えて、まだまだ若いころのように声が出るし、いろんな節回しにもおかずを増やしてきたからけっこう全体を盛り上げることもできる。遊ぶときには徹底して遊ぶ。もうこれしかない。でも、これも来年までおあずけになるだろう。
 (2000.9.25)

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