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フィールドノートG
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 2004.10.8

 ■初秋のたのしみ■

9月第3週の日曜に、キノコ狩りに出かけた。わたしの家族5人と、近所に住むシゲちゃん夫婦と子どもたち4人、それにかれらの友人の大学院生Aくん、という、つごう10人のにぎやかなメンバーである。車2台に分乗して町から1時間強というドライブ。途中、道路脇に停車していたらバックしてきた大型車からサイドへ追突され、ドア一枚がべっこり凹んでしまう、というハプニングがあった。それでも、まあそれも警察を呼ぶまでの1時間ほどのロスですんだ。わたしはサイドの傷付いたスズキ・エブリィを運転して山道を転げるように走った。

最初の目的地は、山梨県に入って標高700mほどまで登っていく。以前は快適な高原の雰囲気を味わえたが、最近は訪れるひとが減っていて、周囲の竹林が勢いを増していたり、草地の手入れがなされていなかったりで、さびれた印象が強い。それでもコナラの林にはいるとさまざまなキノコがたくさん顔を出していた。ここでのいちばんの収穫はマイタケである。プロの間でクロマイと呼ばれる最高級品だ。しかもその幼菌で、香りが強く、天ぷらにすると美味このうえない。むかし傘の色が濃い青灰色のものを採集したことがあるが、あれはたしか8月のことで、あのときはずいぶんおどろいたものだった。
マイタケ幼菌。写真でみるより傘はもっと黒い。径25cmくらいの株。

わたしがマイタケをみつけたので、みんな色めきたったが、結局、その後でさらにマイタケを追加できたのは目のいいシゲちゃんと、シゲちゃんちの小学2年生Kくん。そしてわが家の小学4年生の次女、という子どもふたり。
ウラベニホテイシメジ。菌輪を描いて発生していた。
かれらはスーパーの袋いっぱいというわけにはいかなかったが、充分満足しているようだった。ほかに鮮やかな朱色のタマゴタケや、群馬県ではたいへん好まれ、わたしも大好きなウラベニホテイシメジ、香りの良いアンズタケ系統のもの、などが収穫できた。シゲちゃんのかみさんのアッちゃんはけっこうワイルドなひとで、ひとりで歩き回ってアカヤマドリなんかも見つけていた。

さらに山梨県側に入り込む。標高1250m地点で、車を降りた。一帯はカラマツにミズナラやブナなどが混じった林になっている。ここでは多種類のキノコを収穫できた。目玉はなんといってもクリフウセンタケ(ニセアブラシメジ)である。高級料亭に持っていけば高値で買い取ってくれるらしい。それほどに味がよい。これがフェアリィリングを描いていて、見つけたシゲちゃんともども思わず小躍りしたくなった。茎をフリッターに揚げて、傘は銀あんかけに料理してみたが、たちまちみんなが平らげてしまったものだ。それと、ムラサキアブラシメジは小型菌であるが、酢の物に合い、上品な味がたのしめる。
 今年は夏が異常に暑く、キノコ菌はだいじょうぶだろうか、と心配したのだが、杞憂であったようだ。
クサウラベニタケ。成菌だから見誤らないが、これが幼菌なら…?
夕方、料理のうまいシゲちゃんと、そこそこやるわたしとで手分けしてキノコ料理にかかり、パーティになった。子どもたちを中心にすごい盛り上がりである。Aくんは自分の彼女を国分寺から呼び寄せるほど。天然キノコの味はそれほどにひとをたのしませるものである。クリフウセンタケの茎はほとんどイカのフライに匹敵するくらいの濃い味を持っているし、写真では紹介できなかったが、チチタケのスープはほかのどんな素材のスープにも負けない味の切れを示す。
クリフウセンタケ。里山のものとちがって菌がおおきい。
ムラサキアブラシメジ。この色彩にこころひかれる。手のひらいっぱいほどの収穫。

このときは、ほかにフキサクラシメジ、チチタケ、ヒイロガサ、カワムラフウセンタケ、ツルタケなどを採集。量の少ないものはまとめて煮てスープをとった。塩と胡椒だけで味つけする。そのまま飲んでもいいし、各種の料理に応用できる。

ツチアケビ。標高1250m地点に生えていた。
カゴソウ。夏枯草と書く。花の時期はウツボグサが正式名称らしい。
左の写真のツチアケビはナラタケ菌と共生する。白土三平さんによれば手荒れに効くとか。カゴソウは暑気払いのハーブ茶になる。


ニオウシメジ。藤野町吉野イベントパーク。

某日、子どもたちと吉野のイベントパークにニオウシメジを見に行く。なんでも新聞に載ったという。その情報はシゲちゃんから。おおきな株は持ち去られ、中くらいのはどっかの大学がアルコール漬け標本に、残ったのが写真のもの。このくらいのものは、どう料理してもうまい。それかあらぬか、この株も近所のひとたちが鍋にしてしまったらしい。

馬貝葉椎…有明海に産するマテ貝に葉が似るのでこの名がある。イベントパークには何本か植えてある。ちょうど実が落ちていて簡単にひろえた。実は九州のものはもっとスマートでひとまわりおおきい。色もずっと濃い。ローストして食べてみたが、子どものころ味わったものと変わず、うまかった。わが家の子どもたちもよろこんで食べた。渋皮がくっついてこないから食べやすい。かすかにえぐみのようなものもあるが、慣れるとどうということはない。優れた国産ナッツである。

マテバシイの実。やはり藤野町吉野イベントパーク。

ギンナンなどと同じようにフライパンで焦がす。

ローストするかげんは意外にむずかしい。蓋をしてころころ転がし、ひと粒でもプチっと弾けたら取り出して味をみてみるとよい。歯で割ればいいのだが、歯のわるいひとはギンナン割りを使うと簡単。写真のようにやや暗い緑から灰色の透明がかったローストかげんでOK。香ばしく、あまりくせのない味で、ひとつかみくらいはお茶でも楽にいける。だが、こういうナッツ類にはほんらい強い酒が合うものだ。最近のわたしは晩酌をやらないが、純粋モルトの煙いやつでいっぱいやるなら、まさにぴったしというところだろう。

               

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