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フィールドノート7
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 2004.8.17

 ■淑女の訪問■

▲日本の国蝶。インクジェットプリンターのインクの上にとまった。
仕事場にオオムラサキが舞い込んできた。近くにクヌギの林がある。湖になだれこむような斜面に、コナラと常緑のカシなどに混じって林を形成している。そこで生まれたのだろう彼女たちは、夏になるとしばしば仕事場にふわりと飛んでくるのだ。
こんな環境がずっと続けばよいとおもう。が、最近は不安材料が増している。
ひとつは周辺に不法投棄が絶えないこと。
もうひとつは、勝瀬橋の脇にあらたに架橋されている巨大なコンクリートの橋が、2車線の道路となって青田(おうだ)を横切り、篠原からピクニックランドへ抜ける奥牧野相模湖線へと延長されるからだ。相当に大掛かりな工事になるだろう。勝瀬橋のゆくえも気になる。米軍の機銃掃射の跡をとどめる文化財としての価値はおおきい。取り壊されるようなことになれば問題だ。町や県はどう考えているのだろうか。貴重な戦跡を消し去ってはならないだろう。

気まぐれな彼女たちである。長居することはない。なにを好んでやってくるのか、しばらくあちこちとまったあげく、今度は飛んできたとき同様、ふいと開け放った窓から外に飛び去る。短いデート。

先日、名倉のシゲちゃんの招待で1夕、かれの家のベランダパーティで過ごした。
そのとき、タマゴタケでこさえたソースが供され、パンに塗って食べる趣向だったが、素材のよさを充分に引き出してあって、すっかり舌を楽しませてもらった。
タマゴタケは今シーズン2度目の発生で、この日の材料は牧野のデザイナー、JUNさんからもらったという話である。たしかにJUNさんの家の庭は緑が濃い。しかも、あのあたりはキノコ山として土地の人たちに知られている。この夏の猛暑にも関わらず、菌は生きていたらしい。
パーティ参加者のなかで、この秋のキノコの発生状況を危惧する声があった。昨年はこのあたり、発生が少なかったので、ずいぶんがっかりしたものだ。秋に順調に気温が下がってくれて、ざんぶり雨がふってくれたら…
今年のわたしのキノコ採集ノートは、春のアラゲキクラゲとマツオウジを除けば、空白のままである。
雨がなく、猛暑の影響なのか、昨年はたくさん発生したキヌガサタケにもとうとうお目にかかれなかった。
6月からは津久井4町(藤野・相模湖・城山・津久井)と相模原市との合併問題に関する町民運動に関わって忙しくなり、キノコどころではなくなっている。それどころか畑もほったらかしたままだ。
ここへきて、いくぶん暑さもおさまり、朝夕吹く風に秋のかすかな気配も感じられるようになった。
こういうとき、仕事の手を休めて、頭のなかを整理しながら山道をたどるのは気分のいいものである。
なんとか高い山にいきたいと思う。それも車でいけるところではなく、あくまで自分の足で登れるところに。
と、ここまで考えてきて、はたと気がつくことだが、最後に1500m以上の山を登ったのはすでに10年も前だということである。あれからずっと里山をうろうろしてはいても、自分の足でハイランドに身を運んではいない。水平方向の移動だけではなく、垂直方向の移動も、もっぱら車だったということになる。振り返れば子育てと併せて郷土玩具の製作販売などという未知の仕事に乗り出したことが影響している。まとまった時間がとれなかったのだ。

子どもたちとアラゲキクラゲを採集。となりはマツオウジ。どちらも家のすぐそばに生えていたもの。なにかと不便は多いが地の恵みに感謝する日々である。

昨晩の雨でまだ濡れている草地を抜けて散歩にでた。竹林の脇に落ちていた桜の枝に、アラゲキクラゲが着いているのをみつける。色が白く、肉が薄い。真夏の低地に発生するものらしい、ひ弱な感じ。それでも今朝の味噌汁に千切りにしていれると、独特のうまみをかもしだす。以前、四ッ谷に勤めていたとき、新宿通りの『北京亭』でよくランチを食べた。キクラゲと卵を炒めたものが出ていたが、たしか「古老肉」という料理名だったと思う。右の写真はそれを自分流に再現したもの。業務用のキクラゲとはひと味ちがう。ニラを加えて彩りよくした。添えてあるのはエビヅルの実。黒熟しているが、まだ酸っぱい。

               

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