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 2006.3.5

 ■野の便り■


ハルシメジ 桂川のほとりにある寺院の中庭。

先日(3月2日)、町議会に上程された相模原市との合併を決定する廃置分合議案が可決成立した。町は「ふじのちょう」になって行政権はなくなり、相模原市に編入される。思うのだが、こういう流れは自然のおおきな営みのなかにあって、なんらかの必然性を備えているのだろうか、ちょっと考えてしまう。要は安上がりに人間を管理しようという高級官僚の発想なのだが、人も自然の一部であってみれば、いつかは渾沌へ還らざるをえず、いきすぎた人為はひとが豊かに生きるという意味においては逆効果だろうと思うのだが、どうだろう。 さて、ハルシメジである。こういうキノコがあることも知らなければ、実際にみたこともない、というひとは多いだろう。知識として知っていても、実物は想像するよりずっと大きいものである。傘径は15Bに達する。姿形はホンシメジにそっくり。ただ、ホンシメジに比較すると持った感じが軽い。ホンシメジのような快適なキノコの匂いではなく、埃のような澱粉のようなにおいがある。しかし、よいだしがでて、肉団子のスープなんかにいれると、えっというくらいおいしい。

カシタケは茨城県で確認され、近種のカシナバが熊本県で知られている、と図鑑にはある。だが、ここ藤野町でも発生する。ベニタケ系統なのでもろい肉質だが、香りがよく、よいだしがでる。4月になったら近辺の雑木林にいけばその可愛い姿をだれでもみることができる。

カシタケ 図鑑には一部の県でしか確認されていない、とある。  

▲アラゲキクラゲ 巨大なニレの倒木に発生。

アラゲキクラゲはこの季節、びっくりするような巨大サイズに成長して驚かせてくれる。成人男性の手の平サイズを越えるようなものもしばしばみかける。それと、基物によって色あいやかたちがかなりちがうこともある。地方性もあって、わたしの出身である佐賀県でみかける桑の木に生えるものは全体に黒く、まさにアラゲというにふさわしいごわごわとした感じで、味も濃く、そのぶんあくも強い。「道の駅」なんかで土産物として売られている中国は華南地方の亜熱帯林産のものに近い。それに対して、藤野で採集できるアラゲキクラゲはむしろ高山で採集されるキクラゲと九州産、中国産との中間種といってもいい。歯触りもけっこうなめらかで、あくが少ない。そのぶん噛んだときのコリコリ感はないわけだが、歯のわるいひとでも楽しめるという利点はある。それに子供たちにも親しみやすい味だ。収穫は簡単で、料理としての応用範囲の広さもおおきい。
発生場所をみつけるコツは山際をひんぱんに歩いて、こまめに湧水や小流れのある地点を観察すること。空中湿度の高いところ、終日日影になるところ、などは狙い目である。いったんみつけると、ワンシーズンに2〜3回は楽しめる。基物が枯れるのも早いから翌年まで、とか、毎年というわけにはいかないが、安全で味がよく、似た有毒種がなく、見分けやすく、子供たちと楽しく採集できるという点で、アラゲキクラゲはキノコ狩り入門としては格好の素材であろう。
今回、アミガサタケのデータを失って、画龍転晴を欠く内容になってしまいました。藤野にはアミガサタケ、トガリアミガサタケ、マルアミガサタケが発生します。

フキノトウは例年なら2月の頭には顔をのぞかせていた。今年は寒い日が連続していて2月の半ばを過ぎてからやっとでてきた。さっとゆがいて胡麻味噌で汚してやると最高だ。やっぱり酒がほしい。
春いちばんの野の恵み。わが家はこのくらいの収穫が3月半ばくらいまでに5回くらいOKだ。そうするうちにカンゾウが芽をだす。野の便りは確実に届いて、わたしたちをなごませ、気分をおおらかにする。

ここ日連地区青田にあるわが家は陣馬相模湖県立自然公園のなかにある。周囲には自然を守るよう呼び掛ける看板が立っている。しかし、山は個人の持ち山であって規制は及ばない。去年の暮れからコナラの伐採が始まった。ヤマザクラもたくさん伐られている。一帯は貴重な植物も多いのだが。

冬眠を破られたリスが右往左往するさまを幾度も目撃した。イノシシは集団で移動したようだが、とうぜんなわばりがあるので、移動先の集団に追い捲くられたのか木のない山に戻ってきては、またいずこかへ走りまわったりしている。
県はここに新たな大型道路を造る計画を持っている。
               

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