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 2005.11.7

 ■キノコの謎■


今回は、図鑑などに載っていない、よく判っていない種類のキノコをまず取り上げてみた。じっさい野外で出会うキノコの大半は名前の判らないものが多い。かろうじて属・種、似たキノコは思い浮かぶものの、持って帰って手持ちの図鑑を総動員して同定をこころみても、頭をかかえるだけに終わることばかり。図書館やネットで調べても同定は難しい。
いつかは胞子などミクロの世界へ顕微鏡的な探索もやってみたいのだが、(そうすれば同定作業は正確になる)どうにもいまのところはそこまで手が廻らない。異性を追い回すのに人類学が不要なように、まっとうな学究とは無縁に、ただ、美しく豊かなキノコ・ワールドに夢中になっているだけだ。金もかからず、自然の勉強にもなり、その上に美味も追求できるとあれば、どれほど夢中になろうと、かみさんも文句はいわないわけである。そういえば、19億円横領して17人の愛人を囲った男がいたけれど、そういう趣味に走るよりずっとまし、だと思われているのかもしれない。
不明菌その1。フウセンタケの仲間だろう。
山の中腹から尾根すじまでまんべんなく生えている。
雨のなか、傘はねっとりとぬめりを帯びていた。
同定できないキノコは食べてはいけない。これはキノコ愛好者の行動の基本である。それは判っている。重じゅう承知しているのです。にも関わらず食べてしまう。つい、あまりにもうまそうなので、食べちゃう、ということがわたしにもあるわけです。そのかわり、ちょっとずつ食べていく。半日以上おいて、量を増やしていく、というやり方です。でも専門家には怒られそう。上のキノコはクリフウセンタケに似ている。しかし柄はあまり長くならず、根元が太まり、散生する。どこにでも生えていて、採ろうと思えばたくさん採れるが、だれも採ろうとはしない。図書館の専門書にも当たってみたが該当菌はみつからなかった。なにより柄に粘性がない。でも、食べてみるとこれがたいへんおいしい。ところが翌日、腹部の膨満感と煩雑なガス放出に襲われた。なんらかの毒成分を含むキノコだったのだ。残念!くやしいので今後こいつのことをオナラタケと呼ぼう。
ゆで汁に酢と醤油、ゴマ油をかけていただく。うまい!が…
×ぜったいダメ!

不明菌その2 シロシメジ? ヌノビキ? なんだ?シロマツタケは柄にササクレがあるし…?
快適なキノコ臭。ゆでてかじると少し苦い。だしはあまりでない。
これまた同定できないキノコ。山の斜面におおきなリングを描いて大発生していた。これが食用なら…と、手を尽くして調べたのだが、結局、同定できなかった。
傘径は10cm以上。中型のキノコである。清潔で、しっとりした手ごたえがたまらない。傘の表面には茶褐色のささくれがあり、てっぺんから松かさ状に広がる。幼菌も同じ。
柄はオオイチョウタケを思わせる繊維状。太くて傘同様しっかりしている。ひょっとしたらキシメジの白化型ではないだろうか、と考えたりした。
乾くと写真のように傘の表面の松かさのようなササクレがくっきりする。

不明菌その3 急斜面に生えた山桜の樹下である。
このキノコはなんだろう?写真を撮ろうと斜面を登っていったら、なんとデジタルカメラが手からすべって落ちた。そのままころころ転がり落ちていく。斜度は30度くらいあるのかな、あわてて追いかけても止まらず、なんと20mも下まで落っこちてしまった。いったん下って、また登るころにはへとへとになっている。岩がなかったおかげでカメラはどこにも目立った傷がなく、おかしくもなってはいないようだった。ピンが甘いのは息を切らしていたからだろう。
それにしても変ったキノコである。ひょろりとしていて、傘も柄もねばねばした粘液に包まれている。粘液は指でさわるとべとつく感じ。傘のてっぺんはやや尖っていて、茶褐色。柄は太く、上から下まですっとんとんだ。ねじったような繊維紋がある。生木の根元に出ているところをみると、活物寄生だろうか?似たものといえばスギエダタケのような地ネズミのおしっこ跡に生えるものくらいだ。でも、あれは粘性がないはず。とすると……?

ちいさいキノコをたんねんに集める作業をいとわない。モリノカレバタケは四季を通じて発生する小型菌だが、地上部だけをハサミでちょん切って、タッパーに集めて帰り、汁の実にしたり、かき揚げに入れたり、いろいろに使う。今回、目をつけたのはキツネタケの仲間だった。でも、よく観察すると、基準種とは微妙にちがう。なによりヒダが密なこと。キツネタケは粗であるうえに乱れている。といっても、これはおそらく可食だろうが、ここは採集を見送ることにした。同じようにみえるキノコでもよくみるとちがう。それだけキノコ・ワールドは広大だということだろう。
▲不明菌その4.キツネタケの仲間。傘の径は2cmくらいしかない。


▲不明菌その5. いかにも晩秋のキノコらしい色彩。なんでお前みたいな可愛いやつに名がないんや?(とつぜん大坂弁)
モミの樹下に生えていた栗色のキノコである。傘裏のヒダは真っ白で密。柄も白く、温和な印象が強い。見渡すと、そこらにけっこうびっしり生えていた。モミと共生しているのだろうが、同定はできなかった。傘径は4cmくらいまで。匂いは落ち葉のような、なつかしい菌臭で個人的には好きだ。小型菌だが、列を作って発生しているので存在感がある。こんな名もないキノコなのに、すっとは離れ難いような森の魅力に満ちている。

わが家にあるキノコ図鑑
「日本のきのこ」山渓カラー名鑑
「きのこ」ヤマケイポケットガイド(15)
「原色きのこ」清水大典・伊沢正名 家の光協会
「原色きのこ図鑑」印東弘玄・成田傅蔵 北隆館
「カラー自然ガイドきのこ」今関・本郷 保育社

わたしのお気に入り図鑑は北隆館のもの。なんといってもどこかインチキくさい図版のいかがわしさがたまらない。オオウラベニイロガワリをアメリカウラベニイロガワリとしていないところも気に入っている。その点、ヤマケイのヤツは両方とも対米従属している。それと、「原色 きのこ」は清水大典さん(故人)の文章が尖っていて笑える。真の名解説である。



ここらで不明菌から離れ、この秋に撮ったデジカメのデータのなかからランダムに秋色を演出するものを取り上げてみよう。
ノウタケ。ほとんど日のささないところに生えていた。この粉を吹いたような白っぽい色はそのせいかもしれない。
アシナガヌメリ。動物の排尿あとなどに生える。



ルリハツタケ老菌。またみつけた。このぶんだと、山のあちこちに出るのかもしれない。地球温暖化が進んで常緑樹が山に増えてきている。それにともなってルリハツタケも増えているのでは、と考えた。シイやカシとコナラが混じる林の地面に生える。
ドクベニタケ。かじると辛い。ニセクロハツと同レベルの毒性を備えるという説もある。`05年は多かった。
スズメウリ。林の縁に生える。果実は白く熟す。なんとも愛らしい姿だ。


ドクツルタケ。よく知られた猛毒菌。雨が少なかろうが多かろうが、どんな年にも必ずどこかしらに顔をだす。`05年は大型のものが多かった。

               

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