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 2005.10.24

 ■地のちから■

今年の10月20日は、わたしのキノコ狩り人生のなかでもひとつのエポックになりそうだ。ごく身近なところで、あの希菌といわれるルリハツタケをみつけられたからである。ここ藤野町でルリハツタケが発生することを確認できたことはなによりの収穫だった。惜しいことに菌体は盛りを過ぎていて環紋や全体の色が薄い。だが、発生の確認はできたのだから来年は期待できるのではないだろうか。 それにしても完全に落ち葉に埋もれていて、普通であれば見過ごすところだった。ほかのキノコを撮影している途中、偶然にみつけたのだから幸運だったといえる。長いキャリアを持つ愛好者でもめったに実物をみたひとはいないらしい。発生環境はシイやカシなど常緑樹の混じるコナラ主体の雑木林の地上である。一帯は常緑樹が近年増加していると聞いた。それが発生には何か関係しているのかもしれない。

コナラの径。10月だというのにまだ葉が青い。
地味だがヨーロッパで愛されているというキノコにクロラッパタケがある。見た目はともかく、とてもおいしい。大好き。
クロラッパタケ。死のトランペットという名もあるとか。


クサウラベニタケ。今年は有毒キノコもたくさん発生している。いかにも食べられそうだから始末がわるいのだ。おだやかな色、茎は縦に裂ける。
柄が根元で太くてシメジ型。これってなに? おいしそー
上の写真のキノコもクサウラベニタケである。この変化球には幻惑されるひともいるかもしれない。ところがこれを誤って食べるとひどい目にあう。腹痛、煩雑な嘔吐、下痢、体力消耗…

ウラベニホテイシメジ収穫。傘の表面のかすり模様が特徴。
クサウラベニタケとウラベニホテイシメジが並ぶ。
問題はクサウラベニタケが食菌のウラベニホテイシメジと似ていること。近くに地所を持つ方で天然キノコはいっさい食べない、というひとがいる。聞くと、やはりこの関係の中毒経験者だった。「あの苦しみを味わっちゃうとねえ」とおっしゃるが実感がこもっていた。

やまがら。ひとなつこい。口笛で呼ぶと、かなり近くまで寄ってくる。わたしの土鈴のシリーズにも入っている。
うさぎのふん。できたてのほやほやた。山の斜面のあちこちにある。タヌキのためぐそもあったが、写真は…×
フクロツチガキ。中世の牧師?
アオミズ。茎を食べる。
カバイロツルタケ。おいしい。
ズキンタケ。3女がみつけた。
食べられるといわれてもねえ…
ズキンタケ2種。左の写真のものは汎布種で、右のタイプはあまりみかけない。
(ズキンタケ目は200科4000種があるらしい。おそろしい大所帯である。これだけ研究しても人間の一生では足りないだろう。おもしろいのは、戦前から戦中にかけて、この種類は食用とされ、盛んに缶詰なんかも生産されていたという。いまはそんな話はまったく聞かない。豊かな時代に振り向かれなくなったけれど、じつはとんでもない薬効があったりして…)


アカモミタケ 早めに出たもの。 幼菌のうまいこと!
カノシタ。例年安定した発生をみるが、今年は特にたくさん発生しているようだ。かたちも大きく、手のひらにのせると、ずっしり重いもの多い。これから気温が下がっていって、冷たい雨のなかで発生するものは虫が少なく、姿がよりよくなっていく。わが家のみんなが好む優秀な食菌。
2〜5株くらいが根元と傘の両方で癒着している。
熱を通すとこりっとした食感がうまれ、こたえられない。


サクラシメジ。こんな10月の後半まで発生し続けた年は珍しい。通常なら山の尾根筋にリングを描いて出るのだが、今年は山の中腹などに単体で発生しているものも多かった。特有の苦味はあるものの、タマネギとの相性がよく、いっしょに炒めてトマト味にするとなかなかいい。

アサギマダラが1羽、休んでいた。
ウズハツ。今年はまたなんとたくさん発生していることだろう。誰も採らないから山中のあちこちに出て、そのままになっている。そんなにうまくないから、といって毛嫌いするのはどうか。だいたい毎日うまいもんばっかり喰ってどうするんだと思う。しみじみまずいなあ、と思えるようなものも、人間ならたまには自主的に口にいれるべきだ。そうでないと本当のうまさが自分では判らなくなって、自分の舌なのに肝心の味覚はどっかの評論家のいいなりになってしまう。いつのまにやら大手食品会社の味の奴隷になっているかもね。


ハナビラニカワタケ。早春から初冬まで、低山からかなりの標高のある林まで、雨が続けばどこかしらで見られるキノコ。今回は甲州街道をはさんで相模湖の両岸の山からそれぞれ採集できた。
(梅雨のころ標高が7〜800mあたりに発生するものは花びらがややピンクがかっていてなまめかしい。味はすばらしく、お吸い物でも酢の物でも天ぷらでも、さわやかな山の味を供してくれる)
相模湖の北側の山に発生していた。
こちらは相模湖の南側の山にあったもの。
朝夕はかなり冷え込むようになった。今朝など外気温は10度を切っている。今年は初秋に雨が多くてキノコが大発生し、すっかりたのしませてもらっているが、この気温の低下にともなって晩秋生のキノコもまた顔をのぞかせてくるだろう。しばらくはフィールドから目が離せない。この力強い地のちからにあやかれる日々に感謝しよう。
           

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