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第4号

 虫めがね
秋の訪れとともに虫の声がにぎやかに聴かれる今日この頃の夜ですね。上の句の「良夜」とは秋の名月のことです。澄みきった空に煌々と輝く月の光のもと、昔の人々は書に親しんでいたのでしょう。秋は読書の季節だったのですね。いつでも電気の光で本を読めるようになった私たち。多くのものを手に入れたかわりに根本になる大切なものを失っていくような気がします。憎しみから生まれた暴力によって一瞬のうちに何千という命が消えてしまうこの世界で、命を与えられた私たちはどのように生きていけばいいのか。思いにふける二十一世紀の良夜です。                        (M)

今月のおすすめ本 ※おすすめ(1)は低学年、(2)は中学年、(3)は高学年が対象です。
おすすめ(1)
「ゆかいなゆうびんやさん」
おとぎかいどう自転車にのって
ジャネット&アラン・アルバーグ作
佐野洋子 訳
文化出版局
 いつか ある日の 自転車にのって
やってきたのは だれだろう
ゆかいな ゆかいな ゆうびんや
野こえ 山こえ かなたから・・・・
まるたごやの3びきのくまご一家さま
もりのなか おかしの家でがんばっている方へ
まめの木農園 100階ハウス 大男さま
シンデレラ王女さま
おばあさんの家にいる おおかみどの
ゴールディロックさま
       に 一通の手紙をとどけます。
ゆうびんやさん ごくろうさん
こんどは あなたの家にもやってくるかも・・・
たのしいお手紙つき
シリーズに「ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス」もあります。
                          (金澤 久子)
おすすめ(2)
「つるにのって」とも子の冒険
ミホ・シボ 原案
金の星社
 小学6年生のとも子は、「平和記念公園」の資料館へ原爆の勉強をするためにひとりバスにのる。原爆が落ちたすぐ後の様子を再現した展示物。あまりの恐ろしさに涙があふれる。出口のそばでガラスケースに入ったたくさんのおりづる。とも子は、公園のベンチでもってきたキャンディを口に入れてそのつつみ紙でおりづるを折っててのひらにのせてふく・・・・そこから同じ6年生のさだ子ちゃんと、不思議な出合いが始まります。原爆の恐ろしさと平和を願う心。
ぜひ今の子供たちに読んでほしいと願います。
                          (諸角 通代)
おすすめ(3)
『まき貝のうた』
坪井郁美・作 
西村繁男・画
福音館書店
 尚子(しょうこ)は気持ちのまっすぐな小学4年生です。ほんとはなかよしのけんたのおでこにキズをつくったり、ばか正直にも秘密のかくれがへ夜中にでかけていったり、負けん気もじゅうぶんです。ただ、お母さんの病気や、よくできて素直な姉のアイ子がいることで、自分の気持ちをおもてにだせないでいるのです。その尚子が夢見るのは、お父さんのような船乗りになって、南の海の夜空にかがやく星をつかんでみたい、ということ。おみやげの貝を耳にあてると、遠い海の音が聞こえるのですが…。
 舞台はちょっとむかしの関西地方。読み終わって、こんな子いるなあ、と思わずまわりの友だちのだれかをふりかえったりするかもしれません。さし絵は藤野在の西村さんです。
                           (蒲原雅人)